旨味のシルクロード!樹を食い倒すシロスジカミキリの必要性と味
こんにちは!生き物大好きゆるとと申します!
この記事では、昆虫食以外と比べても格別に美味しいとされるシロスジカミキリの味と、果樹園の害虫として嫌われていても、人間や自然界に必要不可欠な理由について紹介していきたいと思います。それでは行ってみましょう!
シロスジカミキリの生態
分類・・・コウチュウ目、カミキリムシ科、シロスジカミキリ属
分布・・・北海道、本州、四国、九州、奄美諸島
体長・・・触覚を除くと50mm
活動期間・・・5月〜9月
エサ・・・幼虫は広葉樹の幹を食べる、成虫は育った種類の樹皮や新芽、樹液に集まる
寿命・・・幼虫時代は3年ほど、成虫は3~4ヶ月の命
よく飛び、光に集まる性質がある。体を掴まれたり、捕食されそうになると、キィキィと高い音を出す。
日本最大のカミキリムシ
体長は50mmほどで長さだけなら同じくらいのカミキリムシもいますが、厚みのある大きな体と太く長い触覚の存在感からシロスジカミキリが最大種と認識されています。
カミキリムシ類は触覚が長いことが多いですが、シロスジカミキリの場合は約150mm程とかなり長く、オスはさらに触覚が長いという特徴があります。頭の大きさに対して複眼の面積が広く、樹木を食い破る発達した大あごは迫力満点です。しかし、捕食者に狙われピンチになると、か細い高い音で「キィキィ」と鳴くのは見た目とのギャップがあり可愛らしく感じます。
名前のわりに体の模様は黄色く、白っぽい要素はありませんが、実はこの模様は死んだ後に真っ白に変わります。この色にちなんで「シロスジ」と名前が付きました。
害虫と呼ばれる理由
多くの昆虫はそれぞれ専門分野があり、マメ科の植物専門、バラ科の植物専門、柑橘系の樹木専門、など一つの植物に執着、依存する傾向があります。
しかしシロスジカミキリの場合は、クヌギ・コナラなどブナ系樹木、カシ・シイ類の木、ヤナギ、ケヤキ、その他にもクリ・ナシなどの果樹と幅広い種類の広葉樹を食害します。よく飛び回るため、行動範囲も広くなり被害にあう樹木が多くなります。
このほかに幼虫時代が長く3~4年の間、木を食べ続けることと、産卵の時自分が育った木に戻って卵を産む習性などから、一度果樹園に入ってくると集中的な被害を与えるため、農業では重要害虫として警戒されています。
悪いことはこれだけでなく、集中して同じ木を狙う習性から取り付かれた樹木が空洞化し脆くなり、強い風や台風などにより木が折れる倒木による被害が起きやすくなります。
なぜ必要な存在なの?
虫取り少年とのかかわり
多大な被害を与えるシロスジカミキリは「根絶するべきだ!」と言いたくなった「そこのあなた!」気持ちは十分理解できますが、自然界はもちろんカブトムシ・クワガタが大好きな虫取り少年には特に、絶滅すれば大変なことになる昆虫でもあります。
大きいお友達も小さいお友達も、虫取り少年ならカブトムシ・クワガタ採集は避けて通れない一大イベントではないでしょうか。このような昆虫が主食としている樹液は、シロスジカミキリの「食べた穴」から染み出しています。
カブトムシなどが大切な主食として集まる樹液酒場を開催できるような樹木は、皮が固く、分厚いため、樹液を出すにはこの木の皮を食い破れる大型のシロスジカミキリの力が必要になります。またシロスジカミキリは虫取り少年が採集やすいように、地上から50cm~150cmの場所に噛み付き卵を産み付けます。成虫だけでなく幼虫も、産み付けた場所から木を食べ進むことで、その部分がささくれだったこぶ状に大きくなり、樹液酒場を見つけやすくしてくれるなど、親子そろって虫取り少年への気遣いを見せてくれます。
広葉樹林とのかかわり
シロスジカミキリは森の木全体を少しずつ食べるのではなく、狙った木を集中的に食べることで、森の成長を維持しつつ「間引き」をする役割があります。
特に雑木林には生命力の強い木が多いため木が密集しやすく、これにより風通しが悪くなると、湿気がたまりジメジメと蒸れ病害虫が発生しやすくなります。定期的に間引きを行うと、森に光が入り新しい樹木の成長、多くの生物が生息できる環境を整えることができます。
雑木林の様に秋になると紅葉し葉っぱが落ちる広葉樹林は、雨が降っていなくとも川に安定して水を流す「貯水タンク」の役割があり、水道の水源、水を浄化、大雨による土砂崩れを防ぐなどの重要な役割があります。このような広葉樹林の新陳代謝を助けるシロスジカミキリの必要性はわかっていただけたと思います。
意外と低い生存率
農業において重要害虫に指定されたり、多くの広葉樹を食い倒したりと繁殖力旺盛なイメージがあるシロスジカミキリですが、以外にも成虫まで生き残る確率は低いです。
原因の一つに天敵の寄生バチがいます。ウマノオバチというこのハチは長く変化した針を木の穴に差し込み、カミキリムシの幼虫に卵を植え付けます。卵からかえったハチの幼虫は、カミキリムシの幼虫を食べて成長します。
ハチのほかにも、柔らかくか弱い幼虫の期間が3年~4年と長いため病気や生育不良になる確率が高く、一つの木に産み付けられた幼虫がすべて死んでしまうこともあります。
入手困難な絶品グルメ!
カミキリムシの幼虫はとても美味しく、「鉄砲虫」と呼ばれ親しまれており、世界中に食べる文化があります。いかつい見た目からは想像できませんが、シロスジカミキリの幼虫はあの有名な昆虫学者ファーブルも絶賛したほどです。
その味は滑らかでクリーミー、香ばしいナッツの様な風味にトウモロコシに似た甘みがあり、炒めるだけでも非常に美味しい逸品です。
あなたも、そろそろお腹が減って来た頃でしょう。ですがこの食材の調達は簡単ではありません。何故なら生きている幼虫を採集するには取り付いている木を切り倒す必要があるからです。
幼虫がいる木はこぶ状の産卵の痕や、焦げ茶色のおがくずの様なフンが塊になって落ちている場所を探せば簡単に見つかります。しかし木を切り倒すとなれば、様々な許可が必要だったり、伐採に危険が伴うなどいくつもの高いハードルがあります。
農業においてはクリの木に取り付くことが多いので、知り合いのクリ農家さんや、雑木林を管理している知人などから譲ってもらうのが現実的ではないかと思います。
捕獲方法と注意点
日本最大の肩書と、魅力的な生態を知ったならば捕まえたいと思うのは虫取り少年の本能です。
採集方法は、よく飛び光に集まる習性を利用した夜の街灯採集が最も簡単でしょう。採集の時期は、人間と同じくゴールデンウィークが明けたころから活動し始めるので、5月半ば~6月頃がねらい目です。
注意点として、噛む力が非常に強いので、服や体についた際は無理に引っ張らずに、木の枝などに掴まらせて取り除きましょう。噛まれれば出血したり服が破ける恐れがあります。
飼育は難しい
成虫の飼育はカブトムシと同じで、止まり木を入れて昆虫ゼリーをエサに食べさせればOKです。そして、成虫に卵を産ませて幼虫を自家培養し、毎年美味しい思いをしようと企んでも、そうウマくは行きません。
産卵に成功しても、幼虫を育てるには生きた木を用意し、病気や生育不良、天敵のハチに注意しながら3年~4年育て、木を切り倒す、という作業を自分の庭でやる必要があり難易度が高いです。
現在急速に数が減少
シロスジカミキリも多くの昆虫同様に数が激減しています。主な産卵場所の広葉樹林や雑木林が無くなってきているからです。
雑木林はもともと人里の生活に密接にかかわっていて、木の再生力が高いため定期的に切り倒し薪にしたり、落ち葉を肥料として利用していて若い木がたくさんありました。若い広葉樹を好むシロスジカミキリにはうってつけの環境でしたが、現在は薪としての利用も少なくなり、管理のための伐採が環境破壊と反対されるなど生息環境が悪化しています。
耕作を放棄したクリ園などで局部的に大発生している情報もありますが、全体的な数は年々減少しています。
最後に
少年が心踊るルックスと、グルメ家も納得の味をもつ素敵なシロスジカミキリについて、少しでも魅力を感じていただけたら嬉しいです。最後まで読んでくださりありがとうございます。
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