ピンクは警戒色?!ジャンボタニシの毒性と食卓に拒否された理由
こんにちは!生き物大好きゆるとと申します!
この記事では、外来種として悪名高いジャンボタニシの毒性と危険度、食材としての評価、食用として普及しなかった理由について紹介していきたいと思います。それでは行ってみましょう!
ジャンボタニシの生態
分類・・・軟体動物門、リンゴガイ科
和名・・・スクミリンゴガイ
分布・・・関東、四国、九州、沖縄
原産国・・・南アメリカ
体長・・・5cm~8cm、スマホのXperia10Ⅲは横幅が約7cm
活動期間・・・4月〜9月、冬は泥の中で冬眠する
エサ・・・雑食性、柔らかい植物を好む
寿命・・・3年~4年
生息環境・・・水田など淡水の川や沼
タニシと名がつくがリンゴガイの仲間。食欲、繁殖力が強く農業において駆除対象になっている。ピンク色の卵を産み付ける。
もともとは食料用に輸入
1980年代に、繁殖力が強く大きくなるため食料用として注目され日本に持ち込まれました。全国500か所に養殖場が作られましたが、販売経路が確立できず養殖所の廃業が相次ぎ、大量のジャンボタニシが廃棄されたり、逃げ出したことで各地に定着してしまいました。
毒性と危険度
なぜ駆除されているのか
ジャンボタニシは食欲、繁殖力が強く柔らかい植物を好み、田植えしたばかりのイネ、イグサ、レンコンなどの農作物に大打撃を与えるため重点対策外来種として駆除されています。特に気候が温かい九州などでは深刻な被害が発生しています。
毒と寄生虫について
食用に輸入されましたが、ジャンボタニシの卵と内臓には毒があり、危険な寄生虫の宿主にもなっています。
毒の成分は「PCPV2」という神経毒で、他の動物でこの毒を持つものは前例がなくとても珍しい特性です。その為かこの毒に耐性がある動物が少なく、卵を食べるものは昆虫の「ヒアリ」ぐらいしかいません。ちなみに卵は毒を栄養にして育ちます。
寄生虫については、「広東住血吸虫」の宿主になっていて、人間に感染すると脳や脊髄に侵入し、発熱・激しい頭痛・嘔吐・脳神経麻痺・大幅な筋力低下・知覚異常を引き起こします。日本ではかつて一部地域で多発する、原因不明の風土病として恐れられていました。
生命力の強さ
ジャンボタニシの最も厄介なところはこの生命力の強さです。このタニシは卵からふ化すると2か月ほどで成熟し、気温が下がる冬までの間、3日に1回、300個の卵を産み続けます。6月に成体になった場合、冬眠する9月まで約9000個の卵を産むことになります。卵には毒があるため食べられる心配がなく、ほぼ300個がすべてふ化します。
ジャンボタニシはエラ呼吸と肺呼吸、両方行える器官があり雨の日や短時間なら陸上を移動することが可能で、歩行速度もかなり早く、小さいタニシは水流に乗って移動できるため生息場所を急速に拡大することができます。
また乾燥にも強く、陸上でも長時間生き延びたり、水田から水がなくなる秋や冬も土や泥に潜って冬眠し、春に水が満ちると目覚めて活動を開始します。
日本在来種との見分け方
ジャンボタニシ | 日本のタニシ |
長い触角が2つ、短い触角が2つ | 長い触角が2つ |
殻が薄く割れやすい | 殻が厚く硬い |
殻が丸く、殻の下が深くくぼんでいる | 殻がとがっていて、くぼみが無い |
卵を産む | 貝の状態で子供を産む |
イネを食べる | イネは食べない |
食材としてのポテンシャル
味の評価
悪い面ばかりが目立ちますが、本来の目的、味については高いポテンシャルをもっています。
柔らかく大きな肉質と、サザエのようなコリコリの食感。アジアでは唐辛子などの香辛料と一緒に甘辛く料理されることがおおく、伝統的なタニシ料理としても美味しく食べられます。
日本ではイタリア料理のシェフがメニューとして提供している店もあります。
調理方法と注意点
簡単な調理方法としては、
1.薄い殻を砕いて中身を取り出す
2.内臓を取り除き、ぬめりを取る
3.茹でてあくを取る
4.お好みの味付けで料理する
注意点としては、
1.寄生虫や毒が付かないようにゴム手袋などで触る
2.水道水などきれいな水で数日間、泥を吐かせる
3.寄生虫を死滅させるために十分加熱する
4.調理後、使った調理器具を熱湯消毒し、寄生虫や毒を無力化する
食材としての評価
メリット・・・
可食部が大きい、柔らかく食感が良い、様々な料理に使える、入手が簡単
デメリット・・・
大きさのわりに食べる部分が少ない、下処理に手間がかかる
食卓に普及しなかった理由
食材としては悪くないジャンボタニシですが、日本の食卓には普及しませんでした。確実に「これだ!」という原因はわかりませんが、私なりに考察したいと思います。
タニシ料理自体を食べることが少ない時代だった・・・
ジャンボタニシの繁殖が始まった1980年代は、「俺たちひょうきん族の放送開始」、「東京ディズニーランド開園」、「ファミコン発売」、「麻布十番マハラジャのオープン」、など日本中がバブル真っ最中、欧米化が進んでいる時代でした。この時期にタニシ料理は正直「バズる」要素があったと思えません。
日本のタニシが圧倒的に美味しかった・・・
昔から食べられていた日本のタニシの味はというと、「内臓がうまい」、「味が濃厚」、「出汁が美味しい」など旨味がとても強く、シジミなど海の貝にも負けない存在感がありました。同じ手間をかけるならば日本のタニシのほうが圧倒的にコスパが良いです。
農業での意外な利用方法
ジャンボタニシに希望の光が!問題になっていた農業に、逆に利用できる方法があります。それは「柔らかい葉っぱを好む」性質を利用した、雑草の除草です。
ジャンボタニシは水中で食事する特徴があり、水田の水量をぎりぎりに抑えるとイネの根元の硬い部分だけが水に浸かるためイネが食べられることはなく、芽吹いたばかりの柔らかい雑草を食べてくれるというわけです。
数週間すればイネは成長し、葉っぱも硬くなるため水深を深くしても食べられることはなくなり、雑草だけを食べ続けてくれます。
ですが、この方法は田んぼの深さが均一になるように水田の土を平らにする代かきや、雨や日照りなど日々刻々と変わる水量の管理など、高い稲作技術が必要になります。また、タニシ除草をしていない隣の田んぼに侵入したり、小さいタニシが用水路の水流に乗って拡散されるなどの危険があるため、タニシを移動、放流するなど意図的にタニシ除草することは禁止されています。
採取する際の注意点
この記事に悪影響を受け、「タニシを食べてみたい」、「観察してみたい」という方が現れるかもしれないので、採集する際の注意点をまとめます。
水田のタニシは持ち主の許可をもらう・・・
水田は農家さんの所有物です。水田の生き物を勝手にとるのはできないので、あらかじめ許可を取って気持ちよく採取しましょう。
外来種は、「入れない」、「捨てない」、「拡げない」・・・
外来種の生物を捕獲、飼育するときは、採集した場所以外の所には「入れない」、「捨てない」、脱走されたり逃がしたりすることで「拡げない」ことが大切です。
外来種について、詳しくは「環境省のページ」をご確認ください。
最後に
熱帯魚ショップではジャンボタニシの黄色い品種が「ゴールデンアップルスネール」として販売されています。珍しい毒や生命力の強さ、面白い生態などジャンボタニシは魅力的な生き物です。人間の都合で持ち込まれて駆除されているだけなので、私のことは嫌いになってもタニシのことは嫌いにならないでください。
この記事を最後まで読んでくださりありがとうございます。